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なぜ膣内フローラが乱れるの?
女性の膣内には、腸内と同じように多種多様な細菌が棲んでいます。その中心となるのが乳酸菌です。乳酸菌は膣内を弱酸性に保ち、外から侵入してくる雑菌の繁殖を防ぐ“ガードマン”のような存在です。乳酸菌が優勢な状態こそが「膣内フローラ」が整った健康な状態ですが、このバランスは日常生活のさまざまな要因で簡単に崩れてしまいます。
もっとも大きな原因のひとつが、女性ホルモンの変化です。女性ホルモンの一種であるエストロゲンは、膣の粘膜を潤わせ、乳酸菌の栄養となる「グリコーゲン」の分泌を促します。しかし、更年期を迎えるとエストロゲンの分泌が急激に減少し、膣粘膜は薄く乾燥しやすくなります。それに伴って乳酸菌の数も減少し、膣内の酸性度が低下。雑菌が繁殖しやすい環境になってしまうのです。
また、病気の治療などで使用される抗生物質も膣内環境に影響を与えます。抗生物質は悪い菌だけでなく善玉菌である乳酸菌まで減らしてしまうため、膣内フローラのバランスが乱れやすくなります。さらに、睡眠不足やストレス、偏った食生活などの生活習慣の乱れも免疫力を低下させ、膣内環境を不安定にする要因となります。
意外に多いのが、「清潔にしよう」とするあまりの過剰な洗浄です。デリケートゾーンをボディソープで強く洗ったり、膣内洗浄を頻繁に行ったりすると、本来必要な乳酸菌まで洗い流してしまい、かえってフローラの乱れを招くことがあります。膣には本来「自浄作用」が備わっているため、外側をやさしく洗うだけで十分です。
膣内フローラが乱れると、おりものの量やにおいの変化、かゆみといった症状が現れることがありますが、中には自覚症状がほとんどないままトラブルが進行しているケースもあります。「無症状だから大丈夫」と油断せず、50代以降は特に意識して膣内環境を整えることが大切です。
膣内フローラを守るためには、生活習慣の見直しと正しいケアが基本です。栄養バランスの取れた食事、質の良い睡眠、ストレスをためない生活を心がけましょう。さらに、デリケートゾーン専用の洗浄料を使う、通気性のよい下着を選ぶといった小さな工夫も有効です。近年では膣内フローラの状態をチェックできる検査サービスも登場しており、自分の状態を知ることがケアの第一歩になります。
年齢とともに変化する膣内環境ですが、正しい知識と日常の工夫で健やかに保つことは可能です。小さな変化を見逃さず、自分の体と向き合うことが、これからの健康を守る大切な一歩となります。


